内定は出したけど卒業延期に…新卒外国人のビザ申請はどうなる?
学生ビザから「技術・人文知識・国際業務」ビザへの移行トラブル対策
外国人留学生を新卒で採用する際、採用担当者が最も注意すべきポイントのひとつが卒業予定の変更です。特に、学生ビザから就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)への切り替えは、卒業証明書の提出が必須条件です。そのため、卒業延期になると、予定していた就労ビザ申請ができず、企業も内定者も大きな影響を受けます。2025年現在、入管の審査は年々厳格化しており、「卒業見込み」での特例申請はほぼ認められません。
この記事では、最新の入管運用や実際の事例をもとに、卒業延期時のリスクと対応策を詳しく解説します。
学生ビザから就労ビザへの切替の基本
通常の流れは以下のとおりです。
- 卒業予定(3月や9月など)
- 卒業証明書の発行
- 在留資格変更許可申請(学生→就労系)
- 審査(約1〜2か月)
- 許可・在留カード交付
- 就労開始
入管は、申請者の学歴が就労ビザ要件を満たしているかを必ず確認します。
この学歴確認には「卒業証明書」が必須で、成績証明書や在学証明書では代替できません。
卒業延期がもたらす影響
卒業が予定通りに行われない場合、その影響は学生本人だけでなく、採用予定の企業にも大きく及びます。
まず、最も深刻な問題は在留資格の期限切れです。日本で学ぶ外国人留学生の学生ビザは、通常は卒業予定の月末までしか有効ではありません。もし卒業が延期になれば、その時点で学生ビザの期限を迎え、在留資格を延長しなければ不法滞在となってしまいます。これは、本人の将来のビザ取得や就職活動にとって致命的な不利益となるだけでなく、企業側にも雇用計画の見直しを迫ることになります。
次に、企業の配属計画にも支障が出ます。新卒採用は、入社時期を前提に新人研修や部署配属が組まれているため、ひとりの欠員が他の新入社員やチーム全体に影響を及ぼします。特に専門職の場合、そのポジションに人材が不在となることで、納期や顧客対応にも遅れが生じかねません。
さらに、就労ビザへの切り替え申請は、卒業証明書が発行されるまでは一切進められません。つまり、卒業延期が決まった瞬間に、申請スケジュールは全面的な見直しを迫られます。企業は入社日を延期するか、別のポジションを一時的に用意するなどの柔軟な対応が求められますが、どちらにせよ業務や人事計画に影響が出ることは避けられません。
実際にあった事例:卒業延期から内定維持に成功
2024年に、東京都内のIT企業が採用予定だったベトナム出身のLさん(23歳)は、専門学校のIT学科を3月に卒業予定でした。企業は4月入社を前提に、研修スケジュールや配属先を決定し、就労ビザの申請準備も着々と進めていました。
ところが、卒業制作の進行が遅れ、必要単位を修得できないことが判明。結果として卒業は半年後の9月に延期され、卒業証明書は当然ながら発行されませんでした。この時点で、就労ビザへの切替は不可能となり、さらにLさんの学生ビザは3月末で期限切れとなる状況でした。
企業とLさんはすぐに対応策を協議しました。まずは学校側と連携し、在学継続が認められるよう学生ビザの延長申請を行いました。同時に、企業は入社日を9月1日に変更し、それまでの半年間は他の新入社員で業務を補う体制を整えました。8月に卒業証明書が発行されるとすぐに就労ビザの申請を行い、9月中旬には許可が下り、Lさんは予定通り新しい職場でのキャリアをスタートさせることができました。
この事例は、卒業延期という予期せぬ事態に対し、学校・企業・本人が早い段階で連携を取り、法的な要件を満たしながら柔軟に対応したことで内定を守ることができた成功例です。
最新の入管審査傾向
- 卒業証明書なしの就労ビザ申請は不可
- 「卒業見込み」での例外はほぼゼロ
- 卒業延期中の特定活動(就職活動)ビザは、卒業日が確定していなければ不許可率が高い
- 学生ビザ更新が基本ルート
- 空白期間を埋めるための研修参加は、資格外活動許可の範囲を超える場合は違法
卒業延期時の選択肢
卒業延期となった場合、取れる対応策はいくつかありますが、どの選択肢を選ぶかによって在留資格や入社スケジュールへの影響は大きく変わります。
最も一般的なのは学生ビザの延長です。正規の在学継続が認められ、学校が必要な書類を発行すれば、在留期間の更新が可能です。この場合、就労開始は卒業後になりますが、在留資格の空白期間が生じることはありません。
もうひとつの方法は特定活動(就職活動)ビザへの切替です。ただし、これは卒業日が確定している場合に限られ、卒業証明書を提出できることが条件です。期間は最長1年間で、6か月ごとに更新申請が必要です。
また、場合によっては一時帰国してからの就労ビザ新規申請という方法もあります。この場合、在留資格の空白を避けられる一方で、渡航費や生活再建の負担が発生するため、企業側の理解が不可欠です。
いずれの選択肢を取る場合でも、重要なのは「卒業延期が判明した時点で即座に対応を始めること」です。対応が遅れれば、在留資格の失効や内定取り消しなど、回避可能だったリスクが現実のものとなってしまいます。
Q&A:卒業延期と就労ビザ
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卒業証明書の代わりに卒業見込み証明書は使える?
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原則不可。入管は学歴要件を「卒業」で判断します。
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卒業延期中に内定先でアルバイトできる?
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学生ビザの資格外活動許可があれば可能ですが、週28時間以内・業務制限あり。
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卒業見込みが確定していない場合、特定活動ビザは取れる?
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不可です。卒業日が確定し、証明書が出せることが条件です。
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就労ビザ申請はいつから可能?
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卒業証明書発行後すぐに申請できます。
企業ができるリスク回避策
- 採用内定時に卒業単位の進捗を確認
- 学校と直接連携できる体制を作る
- 入社日変更ルールを事前に社内決定
- ビザ申請スケジュールを複数パターンで準備
