コラム

外国人社員が休職・産休に入ったらビザはどうなる?企業が知るべき対応

日本の企業で外国人社員を雇用するケースは年々増えています。厚生労働省の統計によると、2024年時点で外国人労働者数は約200万人を超え、特に「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」などの就労ビザで働く人が急増しています。

しかし、実務上でよく相談を受けるのが「外国人社員が休職・産休に入ったとき、ビザ(在留資格)はどうなるのか?」という問題です。
在留資格は「活動実態」に基づいて与えられるため、長期の休職や無給期間があると「活動していない」とみなされる可能性があります。企業側が正しい対応を取らないと、更新不許可や在留資格の取消しにつながるケースもあります。本記事では、外国人社員の「休職・産休」とビザの関係をわかりやすく解説し、実際の事例や最新の入管の動向も交えながら、企業が取るべき対応策を紹介します。

1. 外国人社員の「休職」とビザの関係

(1)休職と就労ビザの基本ルール

就労ビザ(例:技術・人文知識・国際業務、技能、特定技能など)は「報酬を得て指定された活動を行っていること」が前提となります。そのため、休職はビザ上「活動停止」とみなされるリスクがあります。

ただし、入管は一律に不許可とするわけではなく、

  1. 「休職理由」
  2. 「給与の支給有無」
  3. 「雇用契約の継続性」
    を総合的に判断します。

(2)無給休職と在留資格取消リスク

入管法には「3か月以上、在留資格に基づく活動を行わない場合、在留資格取消の対象になり得る」という規定があります。
無給での長期休職は「活動していない」と判断されやすく、特に6か月以上 続くと更新時に厳しく審査されます

2. 産休・育休とビザの関係

(1)産休・育休は「正当な理由」として認められる

産前産後休業や育児休業は、日本人社員と同様に「権利」として法律により認められています。
入管も「正当な理由による不就労」として柔軟に対応しており、基本的にはビザ取消や不許可のリスクは低いといえます。

(2)更新時のポイント

ただし、産休・育休中に在留資格更新をする場合、以下の書類を整備して提出する必要があります。

  1. 雇用契約書(在籍継続が確認できるもの)
  2. 産休・育休に入った事実を証明する会社の証明書
  3. 復職予定時期を明記した文書
  4. 給与支給の有無(育児休業給付金を受けている場合はその証明)

3. 実際にあった事例

※実際に起きたケースを参考に、一般化・匿名化して解説した例です。

事例①:病気休職(6か月・給与一部支給)→ 更新許可

2022年、都内のIT企業に勤務していたインド出身のエンジニアAさんは、慢性的な持病(腎疾患)の悪化により主治医から長期休養を勧められました。会社は労務規定に基づき「病気休職」を認め、6か月間の療養期間を付与しました。この間、会社は傷病手当金の受給を前提としつつ、基本給の6割を休職補償として支給しました。

在留期限の更新が近づいた際、会社は以下の書類を準備して入管に提出しました。

  1. 医師の診断書(病気と療養期間の証明)
  2. 休職中も雇用関係が継続している旨を明記した会社の証明書
  3. 給与支給状況の明細

入管では「活動停止」にあたるかどうかが焦点となりましたが、給与が一定額支払われていること、復職予定日が明示されていたことから「雇用契約の継続性」が認められ、問題なく在留資格更新が許可されました。

事例②:無給休職(8か月)→ 更新不許可

2021年、地方の製造業で勤務していたベトナム出身の技能ビザ保持者Bさんは、精神的な不調から約8か月間の休職を取りました。会社は解雇せず在籍扱いにしましたが、就業規則の関係で休職中は給与を一切支給しませんでした。

Bさんは休職中に在留期限が到来。会社と本人は「雇用契約は切れていない」という点を主張して更新申請を行いました。しかし、入管からは以下のような追加照会が来ました。

  1. 実際に報酬を得ていないのに「活動を継続している」といえるか?
  2. 今後の復職予定は具体的に決まっているのか?
  3. 無給期間が8か月に及んでいる合理的な説明はあるか?

結局、給与がまったく支給されていなかったこと、復職の時期が明確でなかったことから「活動実態がない」と判断され、更新は不許可となりました。Bさんは帰国を余儀なくされ、会社も後任探しに追われる事態となりました。

事例③:産休→育休(1年半)→ 更新許可

2023年、大手商社に勤務するフィリピン出身の社員Cさんは妊娠が判明し、会社の規定に基づき産休に入りました。その後、育児休業を取得し、合計で約1年半職場を離れることとなりました。このケースでは、会社が入管対応を重視して以下の準備を行いました。

  1. 産休・育休取得の事実を証明する会社発行の証明書
  2. 復職予定日を明確に記した文書
  3. 雇用契約が継続していることを証明する雇用契約書の写し
  4. 育児休業給付金の支給証明(ハローワーク発行)

更新時、入管は「活動停止ではないか」と形式的には確認しましたが、会社側が「正当な権利行使による不就労」であることを丁寧に説明したため、無事に更新が許可されました。復職後も継続して勤務し、キャリアを維持できました。

4. 企業が取るべき対応

  1. 休職・産休時には必ず書面で記録を残す
    → 雇用契約継続、復帰予定を明確にすること。
  2. 就労実態がなくても「正当な理由」を説明する
    → 医師の診断書、会社証明などを添付。
  3. 更新申請時には追加書類を提出する
    → 特に「復職予定日」「給与支給状況」は必須。
  4. 専門家への相談を早めに行う
    → 更新直前に慌てないよう、行政書士などに早めに確認。

5. 最新の入管の動向

  1. 形式的な在籍だけで実態がないケースには厳格化
    特に無給休職や、長期間の待機状態はリスクが高い。
  2. 育休・産休は正当理由として認められやすい
    ただし「復職予定」を明記していないと不許可になる事例も散見。
  3. 特定技能・技能実習からの移行は要注意
    雇用契約や在籍状況がシビアに審査される傾向がある。

6. まとめ:企業が押さえるべきポイント

Success

✅ 外国人社員の休職・産休はビザ更新・維持に影響する
✅ 無給休職が長期間続くと不許可リスクが高まる
✅ 産休・育休は「正当な理由」として認められるケースが多い
✅ 入管は「雇用継続」と「復職予定」の証明を重視
✅ 更新時には会社が責任を持って書類を用意すべき
✅ 迷ったら早めに行政書士などの専門家に相談することが安心